貿易依存度が高い国は、レートの変動が国家経済に直結する。そのような国にとって、為替の安定が第一であり、金融、景気、物価の安定などは第二である。ちなみに、2022年の貿易依存度をみると日本は39%(166位)、米国は21%(201位)、韓国は82%(60位)である(グローバルノート:世界の貿易依存度)。そんななか韓国は、日本や米国の為替の変動に大きく関心を示している。
先日2日、ソウルのロッテホテルで「持続可能な明日のための偉大な一歩」という国際カンファレンスが開かれた。なかでもハーバード大学の教授による「高金利の長期化」の講話、榊原元財務官による「来年は日本経済が米国より高い成長力をみせ、円高に転じる」という講話に多くの関心が集まった。
そのニュースが流れたせいか、韓国の取引先から最近問い合わせがあった。
「来年、日本の円は上がりそうですか? 政府の調整はないのですか?」
日本は、国内の景気の安定が第一である。レートの変動よりも、まずは景気の安定、金融暖和、銀行の低利率に関心が集まる。レートは後回しである。そこには国が介入しない。いわゆる円安に関心がないのである。
米国の場合はどうかというと、国内の物価安定が第一である。為替変動や景気回復よりも、まずは物価の安定、すなわち金融引締めで高利率を維持し、レートの安定は後回しである。
このような日米の正反対の金融政策によって、両国の金利に大きく差が生じている。現在、米国ドルはあまりに高く、日本円はあまりに安い。それゆえに、超ドル高と超円安のダブルパンチに陥っているのが韓国である。それにも関わらず、両国は為替の調整に関心を示さない。じれったいのも無理はない。
その為替の問題を解決し得る道は、米国の物価ができるだけ早く安定すること。もう一つは日本の景気ができるだけ早く回復することである。そこで韓国の財界は、「ミスター円」と呼ばれる榊原元財務官の「来年は円高に転じる」という言葉に胸をなでおろした。
しかしそこには「来年は日本経済が米国より高い成長力をみせ……」という前置きがある。その文脈には「日本の半導体の景気がよくなる」ということが内包されている。「円安で半導体の景気がよくなり、円高に転じる」とも考えられる。韓国経済を支えている半導体の産業からみれば、これまたボディーブローになってしまう。ウィンウィン(win-win)の道はないのだろうか?
そんな個人的な見解を取引先に伝えてみたが、為替は来年になってみないと誰もわからない。様々な国内外の影響を受けるからである。
0コメント